私が手伝いとして初めて現場に連れて行かれたのは
5~6歳の頃だったように記憶しています
私が連れて行かれる現場のほとんどが
新築現場でした
手伝いと言っても子供にできる事は限られています
現場に着くと最初にしなくてはならないのが
掃除です
室内、廊下、階段にたまっているノコくずや
カンナくずを箒で掃いていきます
ラスターではなくワラぼうき(水箒)です
それが終わると職人さんがラワン材に
刷毛で水を打っていきます
水が乾いてケバが立った所をペーパーでこすります
この様な仕事の合間を縫って汚れてしまった
サゲツ(ペンキを入れる缶)を
焚き火で焼いていきます
程よく焼けあがったサゲツを火から出し
熱が冷めるのを待って掃除をします
この時サゲツを太陽にかざして
穴が開いていないかをチェックします
だいたい5個に1個くらいの割合で
穴が開いています、そして水洗い
水が完全に乾いた所で内側に
セラックニス(自然塗料)を塗り完成です
ともかく家業として塗装業を営んでいるような
家の男の子は、多かれ少なかれこの様な事を
経験しているのではないでしょうか?
しかしこの様な事も中学1年の夏休みを最後に
終わりを告げました。
私がその手に再び刷毛を握るのは
それから6年後です
もっとも最初の1年くらいは
刷毛は持たせてはもらえません
オヤジに影のように張り付いて
只仕事を見ているだけです
そして何か足りない物があったりした場合
それを取りに行きます
返事は「ハイ」
「だって」とか「でも」
と言うような言葉は許されません
これを「手元」と呼びます
私は当初、この様に「ただ仕事を見ているだけ」
という期間は、かえって仕事を覚える機会を
逸してしまうのではないか?
と思い
「早く刷毛を持たせて」もらえるよう
何度か直訴したのですが
そのような意見はすべて黙殺されました
黙殺黙殺黙殺
しかしその日は突然やって来ました
あまりにも唐突でした
「塗ってみるか?」
場所は横浜の戸塚、ドイツ下見の一軒家
木造2階建ての西の面、1階部分の窓の下
目の前に差し出された刷毛とサゲツと一緒に
いまだ忘れる事のない瞬間でした
あれから45年以上が経った今
あの期間(手元時代)の重要性を
しみじみと実感しています
極端かもしれませんが、今までの職人歴の中でも
あの1年間ほど仕事を吸収できた期間は
ないのではないかと思っています
昨今の塗装業界の風潮
昨今、色々なリフォーム関連会社の
広告を目にしますが
この中で塗装に関しての仕事を正確に把握
もしくは正しく理解している施工者が
この不況の中、劣悪なセールスが
各所で暗躍しているようですが
私の所にもそのようなトラブルに遭われた方からの
問い合わせが以前にも増して多くなっています
話を伺いますと確かに業者の責任もありますが
多々、施主の無知によるところも否定できなく
塗り替え工事に対する施主
そしてもちろん施工者自身の意識の向上を目指し
このホームページを立ち上げました。
当然の事ですが施主は塗装に関しては素人です
黒い物が白くなれば綺麗になったと言って
喜んでくれるでしょう
はたして他のプロが見ても満足の行く結果に
なっているでしょうか?
この種の仕事はこだわればこだわるほど
それに対する利益は薄くなって行きます
それに対しリフォームの仲介業だけで
上場されているような企業もあります
彼らがいかなる策を弄して利益を上げているのか